ザ・サウンド・オブ・ミュージック

『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』(フィル・ムロイ、11分01秒、1993、イギリス)

原題:The Sound of Music
監督:フィル・ムロイ
音楽:アレクサンダー・バラネスク


Wiki ショートレビュー:
この作品のタイトルが、ナチス政権下のドイツからスイスへ亡命を計る一家の”音楽と自由”を描いた有名なハリウッド映画と同名に改称されたこと(「エルドラド」より改称)も、風刺の度合いをより深めていると思われる。そして、フィルの描く個性を排された人物の群れが作り出す映像的な運動は、私たち個人が人間社会という抑揚のある”音楽”を構成する個々の音にすぎないのではという感じすら抱かせる。それをどう受け止めるかは見る人次第だ。(2009/07/20/海津研)

昼間は高層ビルの窓ふき、夜はサックス奏者として働く主人公WOLF。昼間、窓越しに見える部屋の中には救いのない光景が続き、夜はわずかな賃金のために、虐げられながら、時には嘔吐しながら、金持ちの観客を相手に演奏を続ける。強者の搾取は留まるところを知らず、弱者はひたすら貪り食われる。その果てにWOLFが自身の楽器を使って行ったこととは…。物語の中盤で、高層ビルから飛び降りるように下降するWOLFの目から流れる「涙」、この場面があることによって、作者の「嘆き」が聞こえてくるかのようで、特に後半、目を覆いたくなるようなシーンが続くこの作品を、どこか「血の通ったもの」、ギリギリのところで人間性を保った作品にしているように思えた。資本主義社会の現実を痛切に描いた風刺であり、反体制的な内容のアート作品における悲痛な叫びのようにも感じられた。(2009/07/19広安)

  • 最終更新:2009-07-20 20:41:39

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